情景描写の描き方|初心者でも伝わる「心を映す」書き方と例文

小説の表現・描写
小説初心者
小説初心者

情景描写が難しくて、上手く表現できません。

小説を書き始めた方の多くが、「情景描写」でつまづいてしまいがちです。実際、物語やシーンを際立たせる情景描写を描くのは、書き慣れた人でも難しいものです。

なぎ
なぎ

今回は初心者でも伝わる情景描写の描き方を、例文を交えて紹介します!

シーン別の描き方を紹介するので、情景描写を描く時のポイントやコツを掴むきっかけになれば幸いです。

情景描写の描き方

情景描写には大きく分けて4つの描き方があります。「どのように描けばいいのかわからない」と悩む方は、これから紹介する描き方を意識してみてください。

① 五感を使う

五感を使うとは、「見える」「聞こえる」「匂う」「触れる」「味がする」など、感覚を通して描く方法です。

【視覚(見える)例文】
夕焼けがビルのガラスに反射して、街全体がオレンジ色に染まっていた。

【聴覚(聞こえる)例文】
水槽のポンプが、一定のリズムで小さく鳴っているだけだった。

【嗅覚(匂う)例文】
コーヒーの香りが漂い、ほんの少し焦げたような苦味が空気に混じった。

【触覚(触れる)例文】
夜風が袖口から入り込み、肌にかすかな冷たさを置いていった。

【味覚(味がする)例文】
さっき飲んだ紅茶の甘さが、まだ舌の奥に残っていた。

  • 視覚:具体的に見えるものを描き、色・明るさ・距離感を入れる
  • 聴覚:空気の温度や人の気配を伝えられる。音の使い分けで感情の変化を感じさせられる
  • 嗅覚:季節を表せる。記憶・感情と結びつけやすい
  • 触覚:温度・手触りの質感を入れる。情緒を描くときに効果的
  • 味覚:心の比喩に使える。シーンの雰囲気にリンクさせられる
なぎ
なぎ

五感を使い分けることで、登場人物の感情や物語の雰囲気を伝えられるよ!

小説初心者
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使いこなせるのか心配です…

【悪い例】公園は静かだった。
【良い例】風が止み、ブランコの鎖がかすかに揺れる音だけが響いていた。

“静か”という抽象的な言葉を、音の消え方で具体的に描写するのが情景描写のポイントです。言葉で伝えると一言で伝えられるところを、丁寧に描くと考えるとわかりやすいですよ。

② 心情と情景をリンクさせる

2つ目の描き方が、心情と情景をリンクさせる方法です。直接「悲しい」「寂しい」と書かず、風景で感じさせる方法です。

【例】雨上がりのアスファルトに、彼の足音だけが滲んでいた。

上記の例では、「一人きりの寂しさ」を、雨と足音の情景で表現しています。寂しい・悲しいという言葉は一言も入っていませんが、情景から寂しさが伝わってきませんか?

小説では、「寂しく感じた」「やけに悲しかった」と直接的な言葉で伝えるよりも、風景を感じさせる方が読者はイメージしやすくなるのです。

③ 対比を使う

“明るさと暗さ”“静と動”など、対照的なものを並べると印象が強くなります。

【例】
子どもたちの笑い声が遠くで弾む。
その音を背に、私は玄関の鍵をそっと閉めた。

“賑やかさ”と“静かな別れ”の対比で、主人公の心情を浮かび上がらせています。この例文は実生活でも感じやすいと思いますが、自分が辛かったり悲しい気持ちになったりしている時に、周りが楽しそうにしていると、より一層自分の惨めさを感じられますよね。

情景描写では、「自分もわかるな」と感じさせられるのがポイントです!

対比は、気持ちを強く感じさせたい・特にここは読者に感じてほしい!というシーンに入れるのがベストです。

④ 「温度」「光」「時間」を入れる

温度・光・時間を描くと、空気感と感情のトーンが一気に立ち上がります。

【例】
春の陽だまりがベンチを温め、木漏れ日の揺れが時間の流れを優しく緩めていた。
その光の中で笑う彼を見た瞬間、胸の奥がふっと明るくなった。

春の陽だまりと彼の笑顔が温かさを伝えているのが感じられますね。木漏れ日の揺れからは、ゆっくりと進んでいく穏やかな時間が感じられます。

なぎ
なぎ

この文章だけで恋の始まりが予感できますね!

空気感を伝えたい時や、登場人物の気持ちの動きを伝えたい時におすすめです!

「そもそも情景描写はどういうもの?」と感じる方、詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

シーン別・情景描写の描き方例文集

ここでは、シーン別の情景描写の描き方の例文を紹介します。「こんな時、どう表現すればいいの?」と悩む方は、ぜひ参考にしてください。

💔 別れのシーン

駅のホームに風が吹き抜けた。
握った手のぬくもりだけが、まだ指先にかすかに残っている。
電車のドアが閉まる音が、思っていた以上に静かに響いた。

「握った手のぬくもりが残っている」この表現に登場人物の未練が表現されています。

「ドアの音が思っていた以上に静かに響く」静かに相手が消えていったという悲しみや、心の内が表されています。

雨上がり、濡れたアスファルトに二人の影が滲むように伸びている。
「じゃあね」という声は小さく、雨の匂いにすぐに溶けていった。

「影が滲む」ここに静かな悲しみ、涙が表現されています。直接涙が頬を伝ったと描くよりも、読者に悲しみを感じさせられます。

「雨の匂いに溶けていった小さな声」二人の関係の終わり、その儚さを表しています。

鏡に映る自分の顔が、さっきより少しだけ大人びて見えた。
彼の番号を消した瞬間、部屋の空気が静かに入れ替わるような気がした。

こちらは吹っ切れたような別れ、関係を終わらすことで登場人物が前を向く時に用いられる表現です。

鏡に映る自分の変化、部屋の空気の入れ替わりにより、前向きな変化を表しています。

💞 恋の始まり

会社のエレベーターで二人きりになった。
冷たい空調の中、彼の体温だけがほんのり近い。
降りる階までの短い時間がやけに長く感じて、ドアが開いた瞬間、胸の奥が静かにざわついた。

触れそうで触れないドキドキとする距離感を表現しています。相手側はどうなのだろうか、平然としているのだろうか?と読者の妄想を駆り立てられるように、相手側のことには触れずに主人公の心の内にだけフォーカスしています。

ページをめくる音だけが響く図書室で、ふと顔を上げた。
窓から射す光が彼の横顔を照らし、その静けさが胸の奥に染み込んでくる。
気づけば、理由もなく目で追っていた。始まりはいつも、音のしないところで生まれる。

「窓から射す光が彼の横顔を照らす」彼が輝くように見えることを表現し、それが主人公の胸の内に広がっていく様子が描かれています。

言葉は交わしていないけれど、相手が気になって目で追ってしまう様子が、学生の純粋な恋愛を想起させます。

駅までの帰り道、オレンジ色の夕陽が二人の影を長く伸ばしていた。
彼の歩幅にそっと合わせた瞬間、ぬるい風が頬を撫でて、胸の奥がふっと熱くなる。
ただ隣を歩いているだけなのに、世界が少しだけ柔らかく見えた。

「オレンジ色の夕陽が二人の影を長く伸ばしていた」この表現に二人の距離の縮まりが感じられます。「ただ隣を歩いているだけなのに」付き合う前の両思い状態なのか、付き合い始めた初々しいカップルなのか、この描写だけでドキドキしますね。

🌙 孤独や喪失

窓の外では、薄い冬の夕陽がビルの隙間に沈んでいく。
部屋に残るのは、冷めかけたマグカップのぬるい匂いだけ。
誰の気配もない静けさが、ゆっくりと肩に積もっていくようだった。

冬の冷たい空気と静かさ、冷めかけたマグカップから孤独を表現しています。一人きりの部屋、元々そこには誰かが隣にいたのか、それとももうずっと一人でいるのか…。

この表現だけでも登場人物の様々な様子が想像できますね。

部屋の時計の音が、やけに大きく響く。
そのリズムだけが、夜を刻んでいた。

時計の音が大きく響くくらいに静かな空間。他には何も感じられない切なさ・孤独感が表現されています。眠れない一人の夜なのか、はたまた誰かの帰りを待っている夜なのか…。

雨の音がやけに大きく聞こえる。
彼がいなくなった部屋は、音を吸い込んだように静かで、カーテンの隙間から落ちる光さえ、どこか冷たく見えた。

「雨」は心の中の大きな悲しみを表し、「音を吸い込む静かさ」はこれまでの彼がいた時との賑やかで楽しい空間との対比が描かれています。同棲していた彼氏なのか、よく部屋に遊びに来ていた彼氏なのか…。

はたまた、本命ではない彼氏との関係に、「彼がそこにいる時だけが幸せ」という切ない気持ちが隠されているのか…。様々な切ない恋愛の様子が感じられますね。

💬 会話シーンへのつなぎに使う情景

カップの縁から立ちのぼる湯気が、ゆっくりと形を変えて消えていく。
その向こうで、彼女はひと言も発さず、指先だけを静かに揺らしていた。
そろそろ話を切り出すべきだと、胸の奥ではわかっている。

大切なことを伝えないといけない、はたまた悲しいことを伝えないといけない会話前を表現しています。「カップの湯気が形を変えて消えていく」くらい時間が経っていることがわかります。

彼女は、こちらの会話を緊張気味に待っている。それらの様子を感じながらも、なかなか言葉を発せずにいる緊張感が伝わってきますね。

夕方の風がそよぎ、カーテンが柔らかく膨らんだ。
彼は湯気の立つマグカップを両手で包みながら、小さく息を整えている。
その静かな仕草に、これから大切な話が始まるのだと気づかされた。

先ほどと同じように大切な話が始まる前兆ですが、こちらは打って変わってハッピーな話が待っているが感じられますね。

プロポーズ前なのか、同棲しようなどの言葉なのか、「柔らかく膨らむカーテンの様子」や、「小さく息を整えている」彼の様子から優しい雰囲気が感じられます。

夜のバス停に、街灯の光が円を描いて落ちている。
二人きりの空間で、吐く息だけが白く浮かんだ。
その白さがゆっくり消えるたびに、言葉が近づいてくる気がした。

「静かな二人だけの空間で始まる会話」これからどのような話が始まるのかと、読者の緊張感を高められる描写です。様々なシチュエーションで使える描写となっています。

まとめ|情景描写は“感情を言葉にしない”技術

情景描写は、単に風景を説明するものではなく、登場人物の心の中を映すものです。今回紹介したように、五感・対比・光や温度などを意識して描けば、読者は状況を“説明されなくても感じ取れる”ようになります。

心の中をを言葉で語るのではなく、風景で語る。それが、印象に残る文章表現の第一歩です。

なぎ
なぎ

まずは今回紹介した例文を参考に、登場人物の心情と当てはまる描写を描いてみてください!

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