小説を書いている人ならば、一度は耳にしたことがあるのが「三人称視点」です。一人称視点、三人称視点と言葉だけは聞いたことがあっても、いまいち違いがわからないと感じている人もいるのではないでしょうか。今回は三人称視点の3つの書き方を紹介します。
三人称視点とは?

小説は三人称視点で書いてなんぼ!って聞いたんですけど
三人称視点ってなんですか?

三人称視点は、客観的な視点で描く書き方です。
一人称視点とは違い、物語を俯瞰的に描けますよ。
三人称視点は、「彼女は」「彼は」あるいは「太郎は」「なぎは」というように登場人物を外側から見た描き方です。一人称視点では登場人物が感じたことを直接描けますが、三人称視点では直接思っていることや考えていることを描くことはできません。

なんだか難しそうですね

一人称に比べると難しいですが、
三人称だからこそ描けるメリットはたくさんあります!
三人称視点の特徴
三人称視点は客観的な視点で物語を進めるため、周囲の状況を伝えられます。

今何が起きているのか、誰が何をしているのかを
読者に様子を教えられるのが大きな特徴です。
・情景描写を描きやすい
・主人公以外の様子も描ける
・客観的な文章が描ける
一人称視点だと主観的にしか伝えられないことを、三人称視点ならば冷静な目線で伝えられます。「情景描写が上手く描けない」、「周囲の様子を読者に伝えたい!」と感じる人は三人称視点がおすすめです。
一人称視点の書き方はこちらを参考にしてください。
三人称視点の3つの書き方を紹介
三人称視点には、3つの描き方があります。
・三人称全知視点
・三人称複数視点
・三人称限定視点
それぞれの書き方を紹介します。
三人称全知視点
いわゆる「神の視点」と呼ばれる書き方です。三人称といえば、この書き方を想像する人も多いのではないでしょうか。
三人称全知視点では、様々な人物の内面を描くことができます。例えば、以下のように複数の人物の様子を一度に描けるのが特徴です。
太郎は花子の話を聞きながら、香菜のことを考えていた。花子は太郎が心ここにあらずなことを知りながらも太郎に話し続けた。
さらにナレーションスタイルにすることもできます。ドラマやアニメでよくある方法です。
太郎は花子の話を聞きながら、香菜のことを考えていた。花子は太郎が心ここにあらずなことを知りながらも太郎に話し続けた。この先太郎が花子に心変わりすることはないのに、なんとも健気な女の子である。
ナレーション=作者の声を登場させられるのが全知視点の特徴です。なんでも描けてしまえるため、読者にあらゆる情報を伝えられます。
しかし、伝えられるからこそ読者が先々を想像しながら読む時間を妨害してしまいます。ナレーションが登場することで、物語の緊張感や空気感が変わってしまうデメリットもあります。
三人称複数視点
三人称複数視点は、登場人物の視点を切り替えられる方法です。主人公だけではなく、脇役や敵サイドの心情も描けるのが魅力です。

全知視点と何が違うんですか?
全知視点はどんな情報も好きに書けます。しかし、三人称複数視点の場合は、あくまでも主人公視点の時は主人公が知っている情報しか描けません。脇役に視点を切り替えたい場合は、場面転換をさせて視点が切り替わったことを読者に伝える必要があります。
太郎は花子の話を聞きながら、香菜のことを考えていた。花子が一生懸命に話しかけてくれていることは、太郎自身よくわかっている。それでも頭に浮かぶのはどうしても香菜のことなのだから仕方ない。
先ほどは太郎と花子の様子を同時に描いていましたが、三人称複数視点では太郎視点の時は太郎のことしか語れません。花子の様子を描く場合は、その後に花子視点に切り替える必要があります。
花子は太郎が心ここにあらずなことを知りながらも太郎に話し続けた。どうせ香菜のことを考えているのだろう。今、太郎の頭の中が香菜のことでいっぱいなことくらい、花子は知っている。それでも少しでも自分の存在をアピールしたいのだ。
このように三人称多数視点では、異なる視点を描くことができます。太郎視点で見ていると好きな子のことを思いながら違う女子の話を聞く男子の様子だけが描けます。花子視点になると、すでに思い人がいる好きな人に自分をアピールしたい健気な様子が伝えられるでしょう。
それぞれの登場人物から物語を描けるのが、三人称多数視点のメリットです。
三人称限定視点
三人称限定視点とは、特定の人物に視点を定めて描く方法です。

それだと一人称と同じじゃないですか?

感覚的には一人称に近い描き方です。
描き方としては、「僕はこの時こう思った」と書くところを「太郎はこの時このように感じていた」と置き換えるだけです。
ただし、一人称で始まらない点から情景描写が描きやすいメリットがあります。一人称で書く場合と三人称で書く場合の違いを見ていきましょう。
僕は思いきり走った。肌に触れる風が肺まで冷やすほどに冷たかった。それでも懸命に足を進めた。早く香菜の元へ行かなければ。
太郎は勢いよく走り始めた。外はマイナス1℃の気温にも関わらず、赤く上気した頬で冷たい息を吐きながら走り続けた。香菜の待つ場所へ向かうために。
比べてみると、三人称の方が情景描写を描きやすいのがわかるでしょう。一人称だと主人公が感じていることをそのまま描くため、直接的な表現になりやすいです。その点三人称は主人公の様子を少し外側から描けるため、客観的に描くことができます。
三人称視点は書きたい小説の内容に合わせて選ぼう
今回紹介したように、三人称視点には3つの描き方があります。どの描き方が良いかは、書きたい小説によって異なります。自分の描きたい物語はどの書き方が一番描きやすいのか、どの書き方が一番読者に伝えやすいのかを考えましょう。
三人称視点は登場人物が感じていることを直接描けないため、一人称視点よりも難しさを感じるかもしれません。複数視点だと混乱する場合は、まずは三人称限定視点から描いてみましょう。

自分の書いた小説がちゃんと守れているのか不安です。

作品に不安を感じる方は、私に見せてください!
コメント